作品概要
『金田一少年の事件簿』の「悲恋湖殺人事件」は、長野県軽井沢を舞台にした、映画『13日の金曜日』を彷彿とさせる殺人鬼ジェイソンの恐怖を描いた物語です。このエピソードは、金田一一の冒険の中でも特に凄惨な描写で知られ、1990年代前半の世相を反映した舞台設定が特徴です。また、後に準レギュラーキャラとなるいつき陽介の初登場エピソードでもあります。
あらすじ
物語は、美雪から悲恋湖バスツアーに招待された金田一一が、本来の招待客である橘川茂の名を騙り、美雪のペアとしてツアーに参加することから始まります。しかし、観月観光にすぐにバレてしまい、特例としてツアーに参加することになります。一は女子高生に逆ナンされたり、腹黒いブン屋に嗅ぎ回られたりとてんてこ舞いしますが、それなりにツアーを楽しんでいました。しかし、その夜、死刑囚・刀丸猛人、通称「殺人鬼ジェイソン」が近隣の刑務所から脱走したというニュースが流れ、和やかな雰囲気は一変します。
翌朝、一同の不安は的中し、朝食会場の近くの樹上から、ジェイソンに襲われ顔を潰された遺体が発見されます。この事件は、悲恋湖に伝わる古い伝説、かつて愛し合うも結ばれなかった男女が身を投げた悲恋湖の伝説と絡み合いながら進行します。ジェイソンの正体は、極度の対人恐怖症で家に引きこもり、映画の中の俳優たちに憧れるあまり整形を繰り返し、過剰な整形により顔が崩れた哀れな男、刀丸猛人でした。彼は自らを映画の中の怪物と思い込み、ジェイソンに扮して一夜で13人を殺害し、警察に捕まります。
ドラマ版では、映画マニアではなく孤独な男性として描かれ、恋人や友人を作れない原因を「自分の顔のせいだ」と思い込み、自分の顔にガソリンをかけて火を着ける自殺未遂を起こします。一命を取り留めるも、醜く焼けただれた顔になってしまった彼は発狂し、薪割り用の斧を手に取り、村にいた人間を襲撃します。彼は醜くなった顔をホッケーマスクで隠し、怒りや絶望の雄叫びをあげて顔をズタズタにする狂気性から、ホラー映画の怪物「ジェイソン」の異名で恐れられます。
この事件の真相は、遠野英治が愛していた女性を見殺しにされた復讐として、無関係の人間を巻き込んで手にかけたというものでした。遠野は、3年前に起きた豪華客船オリエンタル号の沈没事故により海に投げ出された恋人であり実の妹の瑩子を、救命ボートに乗っていた甲田征作氏によって見殺しにされたと信じていました。そのため、瑩子の手を振りほどいた人物を逮捕するよう警察に頼むも、法の規定により罰することができず、自分で復讐することを決意します。
遠野は、瑩子の遺体の手に「S・K」と彫られたキーホルダーがあったため、イニシャル「S・K」の人間が瑩子を見殺しにしたと確信し、観月旅行社が親の経営する会社の子会社であったため、乗客たちから「S・K」のイニシャルを持つ人間をピックアップします。しかし、誰が瑩子を見殺しにしたかは不明のままでした。そこで遠野は、復讐相手が誰かわからないからと、無差別に皆を殺害するというトンデモ理論を持って行動に移します。
まとめ
この事件は、金田一少年の事件簿シリーズの中でも特に複雑で、ロマンスやグロテスクな世界観に力が入っているエピソードです。事件が終わるまで美雪がある重要人物に瓜二つという事実が判明しないため、事件が終わってから遠野と甲田が美雪にする行動の仕組みが分かるようになっています。
この物語は、金田一少年の事件簿の中でも特に心理的な深みと複雑さを持つ事件として記憶されています。
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